ワクチンの同時接種について
近年接種するべきワクチンの種類が多くなり、同時接種(複数のワクチンを同日に接種すること)が行われるようになってきました。しかし同時接種後に死亡した事案があったとの報道もあり不安があることと存じます。今回は同時接種について説明させていただきます。

日本小児科学会(小児科専門医が必ず所属する会)の公式見解を示します。
(日本小児科学会のホームページ http://www.jpeds.or.jp に提言として掲載されています)

日本国内においては2種類以上の予防接種を同時に同一の接種対象者に対して行う同時接種は、医師が特に必要と認めた場合に行うことができるとされている。一方で、諸外国においては、同時接種は一般的に行われている医療行為である。特に乳児期においては、三種混合ワクチン、インフルエンザ菌b型(ヒブ)ワクチン、結合型肺炎球菌ワクチンなどの重要なワクチン接種が複数回必要である。これらのワクチン接種がようやく可能となった現在、日本の子どもたちをこれらのワクチンで予防できる病気(VPD: Vaccine Preventable Diseases)から確実に守るためには、必要なワクチンを適切な時期に適切な回数接種することが重要である。そのためには、日本国内において、同時接種をより一般的な医療行為として行っていく必要がある。

同時接種について現在分かっていること。
1 複数のワクチン(生ワクチンを含む)を同時に接種して、それぞれのワクチンに対する有効性について、お互いのワクチンによる干渉はない。
2 複数のワクチン(生ワクチンを含む)を同時に接種して、それぞれのワクチンの有害事象、副反応の頻度が上がることはない。
3 同時接種において、接種できるワクチン(生ワクチンを含む)の本数に原則制限はない。

また、その利点として、以下の事項があげられる。
1 各ワクチンの接種率が向上する。
2 子どもたちがワクチンで予防される疾患から早期に守られる。
3 保護者の経済的、時間的負担が軽減する。
4 医療者の時間的負担が軽減する。

以上より、日本小児科学会は、ワクチンの同時接種は、日本の子どもたちをワクチンで予防できる病気から守るために必要な医療行為であると考える。

見解は今年3月の予防接種後の死亡の事案が報告された後も変わっていません。
つまり死亡した事案と同時接種との間に因果関係はなく、同時接種は医学的に問題ないという結論です。

当院では2005年から海外赴任者およびその家族に対して同時接種を開始し、毎年百名以上の同時接種をおこなってきました。またインフルエンザ菌b型(ヒブ)ワクチンの接種開始をうけ、DPTワクチン(三種混合ワクチン)との同時接種など積極的におこなってきました。2010年度は349名の方に同時接種をおこないました。
しかし医学的には全く問題ないとはいえ、感情的に不安が残る保護者のかたもあろうかと存じます。
当院では積極的に同時接種はおこなってはいますが、希望がある場合には単独接種もおこなうようにしています。(同時接種をおこなわない場合、スケジュールが間延びし、接種までの時間がかかるため、子ども達が、危険にさらされるということは承知ください)

同時接種を希望される場合、ワクチンの種類、同時接種数につきましては事前に医師に相談いただき、決定させていただきます。

前ページへ