お薬の副作用報道について
近頃、新聞でお薬の副作用の報道が相次いで行われ、またすべての新聞で同じように報道されているわけではないので余計に不安を感じられている方も多いかと存じます。今回はこれらの報道について現時点でわかっていることや当院の考え方についてお話させていただきます。
テオフィリン(商品名・テオドール、テオロング、テオフルマートなど)について
一部の新聞に主に喘息の治療薬として用いられるテオフィリンについて副作用が強いため使用を控えるべきである、との記事が一面にでました。テオフィリンは現在でも大変多く使用されているお薬であるため多くの保護者のかたからご質問をいただきました。
どんな報道だったの?
テオフィリンについて副作用が強いため使用を控えるべきである、というもので喘息の治療を今後どうしていくか、と言う話まではのっていませんでした。また喘息の専門学会からの正式な見解ではなく救急に携わる医師からのものであり、結局、他の新聞2紙は取り上げなかったため混乱することになりました。
どんな副作用がでたの?
テオフィリンはお薬として気管支を広げる作用があるのですが、副反応として吐気や頭痛、興奮、そして痙攣を引き起こすことがあります。今回問題になっているのは痙攣を引き起こし死亡した症例が報告されていることです。
使用禁止なの?
副作用が強いことが判明したお薬については通常は即使用禁止になりますが、現時点ではテオフィリンは使用禁止にはなっていません。(つまり厚生労働省は使用禁止にはしていません)また代替えの効くお薬があるようであれば医師も副作用の強いお薬をすすんで使用したりはしません。つまり現時点では代替の決定的治療が示されていないためテオフィリンというお薬については”注意しながら使用するせざるを得ない”という状況にあると思われます。
どういったことに注意すればいいの?
テオフィリンは少しのことで血中濃度(薬の体への影響の度合い)が変化します。年令、発熱、他のお薬との併用などによって血中濃度が上昇すると副作用がでやすくなります。またテオフィリンに最初から弱い体質や痙攣のおこしやすい体質のかたには副作用がでやすいため注意が必要です。またお薬が長期になる場合も血中濃度が上昇することがあり注意が必要とされています。以上のことは知られている事実であり実際の医療現場でも報道される以前から注意深く処方されてきました。ただ今回の喘息の学会ではより注意深い使用が必要との立場であり、乳幼児(特に一歳までの年令)では他の治療が優先されるべきとされました。
他の治療法はないの?
ゼーゼーが強く寝れないような方には、まずはテープのお薬など他の気管支拡張薬を使用しますが、それだけではなかなかゼーゼー(呼吸困難)は改善されません。その際にテオフィリンが多く使用されてきたのですが、それに変わる方法としては自宅で吸入を定期的にしていただくこと(申し訳ないのですが基本的には吸入器を買って頂く必要があります=約2万円程度必要)やステロイドという薬を積極的に使用していくことになります。また発作がでないよう発作を誘発する物質(ダニやハウスダストなど)を探しだし、少なくしていく努力や抗アレルギー剤という発作がでないようにする薬を長期にきっちりと内服していくことが今まで以上に重要になってきます。
実際には?
ゼーゼーした咳をしている場合にはテオフィリンという薬が処方される可能性があります。もし保護者の方がテオフィリンという薬についてご質問や不安がございましたら医師や薬剤師にお気軽に質問下さい。また内服を続けている場合でも急な発熱時などでは減量も必要になることがありますので、長期に服用されている方は対処の方法などを聞いておくようにしましょう。また先生によっても見解が異なることも多い薬ですので処方される先生に方針を確かめておくことも重要と思います。
インフルエンザ治療薬タミフルについて
タミフルについてはほぼ新聞全紙に掲載され、テレビをはじめとする報道でとりあげられているので、混乱は少ないように思いますがここで要約を示しておきます。
タミフルを内服した後に異常行動などにより死亡した症例が日本やアメリカから十数例報告されました。しかしタミフルを内服したから死亡したのか、内服していなかったら死亡せずにいたかはわからないというのが結論のようです。日本では1500万人以上の方がタミフルを内服しており、
万が一、すべてタミフルのために死亡したと仮定しても百万人に一人の確率となります。一方脳炎の発生率は一万人から十万人に一人といわれています。また新型が発生すれば百人に一人以上の死亡が予想されています。現状ではタミフルについては服用するほうが服用しない場合よりも死亡する確率は大幅に低いという判断であろうと思います。もし内服に不安なかたがおられましたら医師にご相談下さい。
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