マイコプラズマと百日咳
咳が長引く場合、大きく分けるとアレルギーの病気(喘息など)と感染症に分かれます。今回はこの感染症のなかで近ごろ流行が言われているマイコプラズマ感染症と百日咳についてお話します。
マイコプラズマ
マイコプラズマは肺炎をきたす感染症で、以前はオリンピックの年を中心に3-4年ごとに流行があったのですがこの10年くらいは毎年のように流行しています。感染から症状がでるまで2-3週間程度で、小児、若年、青年層に多く発症します。
どんな症状ですか
発熱、咳、咽頭痛など普通の 風邪 と同様の症状がでます。ただし乾いた咳は2週間以上も続きます。咳の割には本人は元気で重症感がないのが特徴です。
診断は
レントゲンで肺炎像を確認した上で血液検査にて確定診断をおこないます、しかしこの血液検査が少し厄介です。病気の初期はいろんな血液検査をするもののマイコプラズマとは判断できない例が多く、2-3週たって初めて(治りかけた頃に)マイコプラズマと判断できる例が多くみられます。マイコプラズマ感染症と確定するには根気強く血液検査を繰り返すしかないと思って下さい。
治療は
マイコプラズマ自体は自然治癒もある病気とされています。つまり薬を飲まなくてもいつかは治るということです。しかし、治るまでの期間が長くなるうえ他人にうつすことが多くなり、また重症感がないもののレントゲンの肺炎像は強いため合併症がでる可能性があります。早く治すためには早めに治療していただくことが大切です。
お薬は
マクロライド系という種類のお薬を使います。(マクロライド系にもいろんな名前のお薬があります)あまり味がいいとはいえない薬なのですが咳が続く場合には我慢して内服して下さい。ただ近ごろこのマクロライド系が効かないマイコプラズマもみられるようになってきました。マクロライド系を続けても軽快しない場合は医師に相談してみましょう。
百日咳
百日咳は特有の連続性の咳嗽をきたす疾患です。その名のとうり百日間程度咳が続く場合もあります。近年、成人での百日咳が注目されていますが、小児と成人では症状が異なるのでそれぞれについてお話します。
小児の百日咳
非常に強い咳(コンコンコンコン↓ヒィー)をきたし、1歳未満の乳児がかかると死亡することもあるとされる大変怖い病気です。診断はその特徴的な咳と血液検査にて判断されます。治療は初期には抗生剤が有効ですが長引く咳にはなかなか有効なお薬はありません。しかし三種混合ワクチンの中に百日咳のワクチンも含まれており、予防が可能です。このワクチンを接種されているかたはほぼ発症しません。百日咳の流行が言われていますが、この三種混合のワクチンを接種された子どもの流行があるわけでなく、このワクチンの効果が薄れてきた成人(または三種混合ワクチンを接種していない小児)に流行しているものと理解して下さい。三種混合ワクチンは生後3カ月から接種が可能ですのでできるかぎり早く接種し予防するようにしましょう。
成人の百日咳
三種混合ワクチンの効果は10年くらいすると薄れてくるとされています。そのため近年成人の百日咳が増加してきました。(はしか も同じことが言えます)これが百日咳の流行として報道されています。(小児の患者数が増加しているわけではありません)成人の百日咳の症状は小児のように強いものではなく、長引く咳だけのこともあり、また診断も血液検査をおこなっても判断できない例もあります。(つまり軽症ではあるが、咳は続き、診断もつけにくい、ということ)治療は小児と同様で初期には有効なお薬もありますが、咳にはなかなか効きません。将来的には、はしか がそうであったように、百日咳の予防接種を思春期に追加すること(アメリカやヨーロッパではすでに始まっている)が必要と思われます。なお最も危険なのはこれらの成人の患者さんが6カ月未満の三種混合ワクチンを接種していない乳児にうつことで、長引く咳をしている方は赤ちゃんのそばによらないようにしましょう。
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